小規模介護事業所の採用戦略とは?

小規模介護事業所における採用戦略の現状と対策

介護・障がい福祉事業所が小規模の場合、大手が行っているような新卒一括採用の強化や外国人採用といったダイバーシティ(※1)の推進などは難しいと感じるかもしれません。しかし、現実的な施策を中心に据えることで、効果的な人材確保と職員のスキルアップを行うことは可能です。この記事では、既存職員のスキルアップや待遇改善、転職者の受け入れ、ロボットなどの導入、新卒採用について紹介しますい。

(※1) ダイバーシティ:異なる背景や特性を持つ人々が共存し、互いの違いを尊重しながら協力することを目指す考え方。

既存職員のスキルアップ

小規模の介護・障がい福祉事業所では、既存職員のスキルアップに力を入れることが最も重要です。職員に新たな知識や技術を習得でしてもらうためには、定期的な研修や勉強会を開催する環境を整えるとよいでしょう。研修に力を入れることで、職員が自身の成長を感じ、業務への意欲が高まります。結果、定着率が高まる好循環が期待できます。さらに、職員に研修の企画や運営を任せるのもおすすめです。例えば職員が得意なテーマで研修の講師を担当します。コストを抑えられるメリットだけでなく、教えることで成長につながります。

待遇改善で定着率向上

定着率を高めて人員を確保することも小規模の介護・障がい事業所にとって効果的な施策です。従業員の定着率を向上させるためには待遇改善を検討しましょう。具体的には、賃金や休暇の見直しや労働時間の削減などの働き方改革が挙げられます。また、福利厚生の見直しも検討するとよいでしょう。厚生労働省によると、福利厚生が充実している職場は定着率が高いとされています。また、業務の特性上、安全や衛生管理体制を整えることも、職員の働きやすさ改善に役立ちます。まずは、職員の立場にたって、導入できそうなものをピックアップし、優先順位をつけて職場環境の改善を行いましょう。

未経験の転職者の受け入れ

小規模の介護・障がい福祉事業所で人材を確保するためには、未経験の転職者を積極的に受け入れる施策も効果的です。介護・障がい福祉業務は利用者の生活支援を行います。支援方法は幅が広いため、異業種での実務経験やスキルが役立つ場面も多くあります。また子育てや家事経験も業務に直結するスキルです。未経験者だからこそ、事業所に新たな価値をもたらす可能性があります。資格取得支援やOJTなどの研修を通じて、介護・障がい福祉職として育成していきましょう。若手の未経験者は成長の伸びしろがあります。シニアの未経験者は人生経験が豊富、利用者と年が近く、適切な会話やサポートができるメリットもあります。即戦力だけにこだわらず、未経験者の積極採用が人材確保のカギとなるでしょう。

ロボットやIT導入による効率化

人員確保が難しい場合はロボットやIT導入による業務の効率化を検討しましょう。移乗介護、移動支援、排泄支援、入浴支援、リハビリ支援、見守りやコミュニケーションなどにロボットを活用することで、既存職員の負担軽減や業務効率向上が期待できます。その結果、職員が継続して業務に従事できる環境ができ、離職を防ぐことができます。導入にはメリットが多い一方で、取り組みとしては期待できますが、市場化されて間もないため高額になってしまう課題もあります。政府も介護・障がい福祉事業の人材不足は深刻であると捉えており、ロボットやIT導入の普及を促進するため、補助金の設置を行っています。事業所のある自治体で該当するものがないか調べてみましょう。またIT導入はロボットと比べると比較的安価で導入できるものもあるので、手作業で手間がかかる業務がないか洗い出し、必要なサービス導入を検討しましょう。

新卒採用の取り組み

小規模の介護・障がい福祉事業所で新卒採用を行うのは、知名度で大手にかなわないからと諦めてしまうのはよくありません。新卒職員は長期的な視点で育成することができ、事業所の将来を担う人材となります。インターンシップや就職説明会を開催する、福祉関連の大学や専門学校などに事業所のアピールをする、地域のイベントに参加するなど学生との接点を増やすことが効果的です。大人数の採用は難しいかもしれませんが、少しずつでも新卒職員を増やしていくことが重要です。介護・障がい福祉職員に育成するためには既存職員の協力も欠かせません。事業所全体で新卒職員を育てていく仕組みや風土を作っていくとよいでしょう。

小規模の介護・障がい福祉事業所も現実的な施策を積み重ねていく採用戦略を行うことで、職員の採用や定着率アップを実現することは十分可能です。まずは既存職員のスキルアップや待遇改善から取り組み、少し難易度は上がりますが、未経験者の受け入れやロボット・IT導入、新卒採用といった施策を増やしていくとよいでしょう。多角的なアプローチを実践することで、人員確保につながるでしょう。