介護職の新人職員のサポート術

約40%が半年以内に辞めてしまう

各調査データによると多くの職員が、半年以内、1年未満の早期に退職しています。介護職に就いた人材は、最初からすぐに辞めようと思って入職したわけではありません。退職の理由を把握し、採用担当者と現場スタッフが協力してサポートすることが大切です。

<1年未満で退職する人材が47%も>
退職者の約半数は1年未満で退職をしています。また人材紹介会社で高額な手数料を支払った人材も40%が半年以内に退職しているというデータもあります。

介護人材の勤続年数

<事業所規模が小さい方が退職率が高くなる傾向>
事業所の規模別に退職率を比較してみると19人以下の小規模な事業所の割合が高くなっています。またサービス別では有料老人ホームの退職率が高い傾向にあります。

事業所規模、介護サービス別退職率

早期退職が招く大きすぎる損失

せっかく採用した人材が数か月で退職してしまうと大きな損失になります。採用活動にかかった金銭的コストや採用担当者の労務コスト、教育や研修費用、指導した職員の労力がムダになります。さらに、欠員を補充するために、再びコストをかけて採用活動を行わなくてはなりません。

<採用・人事担当>
人材紹介会社などに支払う手数料はとくに高額なので、1回でも大きなダメージです。また募集や面接などに費やした労力や人件費は目に見えにくいですが、コストの損失になっているので要注意。

早期退職によるコスト損失、労力損失、コスト増

<現場スタッフ・利用者>
急な退職による現場の混乱や疲弊は既存スタッフに負担がかかり、最悪の場合はさらなる退職を生む可能性もあります。またスタッフが頻繁に入れ替わることで利用者やそのご家族に不安を感じさせてしまうこともマイナスです。

介護人材の退職による現場の疲弊

新人介護職員の悩みを知り、先回りサポート

特に重要なのは入職1か月~3か月の間です。新人介護職員(とくに未経験者・無資格者)の多くは、最初につまずいてしまうとすぐ退職の決断をしがちです。入職直後に直面する悩みや心理を知り、先回りしてフォローすることが大切です。3ヶ月の壁を一緒に乗り切ることができれば定着につながるでしょう。

<新人介護職員が入職後に直面していること>
悩みは大きく4種類。おむつ交換や移乗などのやり方がわからないなど介護業務そのもので教育体制が整っていない場合に起こりがちです。また慣れない夜勤など勤務時間帯による心身の負担、介護を志したもののイメージとちがったと戸惑うことがよくあります。

新人介護職員が直面する問題

<介護技術や業務の悩みが多い>
未経験者、無資格者の場合は業務の知識や業界特有の決まりごともわかりません。当たり前のことだからと経験者と同じように接してしまうと、自信をなくしてしまうので要注意です。

未経験者で早期退職を経験した入職者の声

求職者が退職を決めるきっかけとなったエピソードです。適切なサポートがあれば退職を防げる可能性が高いでしょう。 ※カイゴジョブ会員のインタビューより

▶頭ごなしに怒られた
わからないことを聞いても、「教えたでしょ!」と怒られて何も聞けなくなってしまった。

体力がもたない
慣れない立ち仕事で足が棒のよう。腰も痛くなり、体力に限界を感じてしまった

先回りサポートの基本

▶教育体制の不安をサポート
(不安)業務を覚えることができず、このままで続けていけるのか心配

<サポート例>
・独り立ちは期間ではなく、習得度合いで判断
・マニュアルの整備、質問ができる時間を確保
・定期的にリーダーや施設長との面談を実施

▶専門用語や略語などの説明
(不安)食介や入禁などの専門用語がわからず、まったくついていけない

<サポート例>
わかりやすい言葉に置き換えて指示を伝える
専門用語や略語を使う時は説明を加える
マニュアルは略語を多用して作成しない

新人介護職員がぶつかる壁を知ろう

介護業界の経験が長いと、業務内容や勤務体系、職場の雰囲気や独特のルールに慣れてしまいます。しかし、新人介護職員は初めての職場、新しい人間関係に直面します。あらかじめ、よくある悩みを知り、職場全体で少しずつサポートしていくことが離職防止に役立ちます。

入職後のお悩み事例

慣れてしまえば些細な悩みも本人にとっては辞めるか続けるかにかかわる大きな問題。小さな悩みが日々の業務で積み上がってしまうと、追い詰められて、突然の退職につながります。特に介護業界未経験の人材は手厚いフォローが重要です。

▶夜勤で生活リズムが整わない

シフト勤務で家に帰る時間がバラバラになった。夜勤明けは、眠ろうと思ってもなかなか寝付けない。疲れがとれず、私だけが健康管理できていないのではと不安。

<サポート事例>
夜勤対策を紹介する
睡眠や食事の工夫についてベテラン職員の経験を伝える。入職後数か月は様子をみながら夜勤回数を決める。

▶利用者の名前が覚えられない

初のデイサービス勤務。利用者の人数が多くて名前が覚えられない。曜日によって入れ替わりもあり大苦戦。声掛けのときに名前がわからないのは失礼なので心苦しい。

<サポート事例>
覚え方のコツを教える
短期間に大人数の名前を暗記させるような指導はNG。メモの活用や特徴で覚える方法など具体例を教える。

▶認知症の帰宅願望にうまく対応できない

夕方になると「帰りたい」と主張され、どうなだめてもうまくいかない。誰かに助けを求めるわけにもいかず、毎回、罪悪感にさいなまれている。

<サポート事例>
家に帰りたい心理には「不安」があるから。安心できる声掛けのパターンを複数教えておく。

▶食事介助中に話しかけたら、怒られた

食事介助で「お口に合いますか?」と話しかけたら、先輩職員から「誤嚥の原因になるからダメ」と厳しく注意された。コミュニケーションを取ってと言われたのに…

<サポート事例>
食事中と一括りに指示しない
声かけがNGなのではなく、タイミングが重要なことを伝える。※食べ物が口にある状態のときは観察する等

うまくいく先回りサポートのコツ

せっかく採用した人材の早期退職を防ぐためには、多くの職員がぶつかる壁とその対処法をあらかじめ知っておくとよいでしょう。特に入社後1~3ヶ月は職場の雰囲気や業務に慣れてもらうためにも、業務量やシフトに配慮や積極的なサポートが必要です。こまめに面談を行うなどコミュニケーションを多くとり、相談できる環境であることを伝えるのと安心して働くことができます。早期退職が減り、職員が定着することで現場の負担も軽減されます。既存の職員にも協力してもらいサポート体制を整えていきましょう。