はじめに
介護・障がい福祉事業所に勤務する職員は、高い専門性と責任感が求められる業務に従事しています。そのため、職員が意欲的に業務に取り組み、やりがいや充実感を持って働くことができているかが事業所の運営にとって非常に重要なポイントです。本記事では、職員の貢献と定着率を高めるために必要なエンゲージメント戦略について解説します。
エンゲージメントとは
「エンゲージメント」している状態とは、職員が仕事に対して高い意欲や熱意を持ち、主体的に日々の業務に取り組んでいる状態を指します。このような職場は、職員が自身の仕事に対してやりがいや向上心を持ち、自発的に関わることで一人ひとりの貢献度が高くなる傾向があります。その結果、生産性やサービス品質が向上し、顧客満足度や利益率などの成果にもつながるとされています。
また、エンゲージメントは職場の雰囲気をよくし、ストレス軽減やモチベーション向上の効果も期待されています。エンゲージメントを高めることは、事業者や組織の成功に直結するため、最近は重要な経営戦略の一つとなっています。
職員の貢献度を高めるエンゲージメント戦略
職員に職場への貢献度を高めてもらうには、働くモチベーションを上げる仕組みを取り入れることが重要です。高いモチベーションを持ち、自身が成長を感じることにより、さらに働く意義を見出す循環が生まれます。モチベーション向上に役立つ具体的な3つの戦略をご紹介します。
・目標設定とフィードバック
職員にとって、自身の仕事が意義あるものと感じることはモチベーションを高める上でとても重要です。まずは職員一人ひとりに目標を設定してもらい、達成するための具体的なアクションを決めておくとよいでしょう。また、フィードバックの仕組みを整備し、職員の成果を評価し、次の目標を定めていくことで継続的にやりがいや充実感をもってもらうことができます。
・スキルアップの支援
職員が自身のスキルや知識を磨くことができる環境を整備することは、貢献度を高める上で欠かせません。事業所は職員のスキルアップに必要な研修や資格取得支援などを行い、職員の成長をサポートします。また、職員がスキルアップによる成長を実感できるように、習得したスキルを活かせる業務の任命や、リーダーなどの役割を与えることも有効です。
・意見やアイデアを尊重する風土の醸成
職員が業務に関して、自由に意見やアイデアを出し合える風通しの良い環境を整えることは、モチベーションを高める上で非常に有効です。職員が主体的に業務に取り組める環境を作ることで、積極的な改善案やアイデアが生まれ、業務改善や効率化につながります。職員ファーストの環境を整備することで、職員が貢献したという実感を持ってもらうことができます。
以上のような貢献度を高めてもらうエンゲージメント戦略を取り入れることで、職員が前向きな気持ちで、やりがいを感じる職場を作ることができます。
職員の定着率を高めるエンゲージメント戦略
職場の定着率を高めるには、働くモチベーションを上げることに加え、働きやすく、居心地のよい職場環境を作ることが大切です。介護・障がい福祉事業所での業務は心身共に負担がかかります。これらを軽減し、長く働き続けることができる具体的な4つの戦略をご紹介します。
・公平な人事評価制度と報酬
職員の貢献度を数値化する人事評価制度の策定を行います。また、成果に伴い昇給や昇格が決まる仕組みを作ることも重要です。スキルアップや貢献度合いにより報酬が決まることで、職員はさらなるキャリアアップを意識します。成長し続けることができる環境では定着率が高まるでしょう。
・福利厚生の充実
職員の生活に密接に関わる福利厚生を充実させることで、定着率を高めることができます。例えば、健康診断の充実、各種予防接種、リフレッシュ休暇、社宅や家賃補助、ベビーシッター補助、退職金制度、などの導入などが挙げられます。外部の福利厚生サービスの活用も検討してみましょう。
・働きやすい環境づくり
職員が働きやすい環境を整備することで、安心して長期間働き続けることができます。具体的には子育てや家族介護などに配慮した柔軟な勤務体系の導入、残業の削減などが上げられます。また休憩スペースの確保や職場を清潔且つ安全に保つことで、ストレスや負担を軽減できるでしょう。
・組織風土の改善
職員が安心して働ける組織風土作りを行うことで、人間関係のトラブルによる居心地の悪さが減り、定着率を高めることができます。具体的には、コミュニケーションを深めるための意見交換会や業務改善の話し合いの場を設けることや、セクハラやパワハラなどのトラブル解決の窓口設置を検討してみましょう。職員同士のコミュニケーションが円滑に行われる環境を整備することで、定着率を高めることができます。
エンゲージメント戦略の成功事例
エンゲージメント戦略を取り入れ、職員の貢献度アップや定着率向上に成功した介護・障がい福祉事業所の成功事例をご紹介します。職員がどのような取り組みに価値を感じ、モチベーションを高めて業務に取り組めるようになるのかを参考にしましょう。
・「ありがとう運動」を実施
ある介護・障がい福祉施設では、職員がお互いに「ありがとう」と声をかけ合う「ありがとう運動」を実施しました。この取り組みにより、職員同士のコミュニケーションが活発化し、結束力が強化されました。また、職員が定期的にお互いに感謝を伝えることで、職場におけるストレスや疲れも軽減され、職員のモチベーションが高まりました。
・職員の能力開発を支援
ある介護・障がい福祉施設では、職員の能力やスキルアップを支援するために介護技術研修やセミナーを定期的に実施しました。さらに、職員が興味を持っていることや得たい知識や技術を聞き取り調査し、それに合わせた研修やセミナーを提供することで、職員のやる気や能力を最大限に引き出すことに成功しました。この取り組みにより、職員のスキルアップが促進され、やりがいを感じることができる職場環境が整備されました。
・職員の声を取り入れた職場環境整備
ある介護・障がい福祉施設では、職員が働きやすい職場環境を整備するために現場の声を積極的に取り入れました。具体的には職員一人ひとりへのヒアリングや意見交換会、改善プロセスの共有を行いました。整備を行ったあとは使い勝手などをフィードバックできる仕組みを取り入れ、継続的な職場環境の整備を行っています。職員目線の職場環境に改善したことでストレスや不満が軽減され、定着率の向上につながった事例です。
まとめ
介護・障がい福祉事業所において、エンゲージメント戦略を取り入れることで、職員の貢献度や定着率を高めることができます。エンゲージメントが強固であれば、職員はやりがいを感じ、自発的に業務に取り組むため、能力の成長や定着率の向上が期待できます。逆に定着率や貢献度が低いと、人員不足に陥り、サービスに悪影響を与える可能性があります。事業者と職員の間にエンゲージメントを確立させ、お互いの成長に貢献し合う、よい関係性を目指していきましょう。