
はじめに
内定は社内の決定ではなく、法的に認められた雇用関係の成立を意味します。それを理解した上で、採用担当者は応募者に内定の喜ばしいお知らせを伝えた後、内定辞退を避けるために手続きを迅速かつ正確に進める必要があります。さらに、スムーズな受け入れと円満な入社を実現するためには、フォローアップも重要です。この記事では、内定後の採用担当者が行うべき2つの主要な行動についてご紹介します。
内定後は書類の提示と内定者フォローを行う
応募者に内定を伝えた時点で、法的に認められた雇用関係が成立します。採用担当者はまず、通知が義務付けられている書類の提示を行い、同時に安心して入社してもらうための内定者フォローを始めましょう。内定直後にこれらの手続きをしっかりと行うことで、内定辞退や入社後のトラブルを防ぎ、スムーズな受け入れができます。
<内定後に行うべき2つのこと>
- 書面で労働条件を提示
- 入社までフォローを続ける

内定者に「労働条件通知書」を渡す
まず最初に行うべきことは、内定者に対して「労働条件通知書」を提示することです。この書類は法的に交付が義務付けられており、就業場所や賃金、休日など、働く上で重要な条件が記載された文書です。まずは「労働条件通知書」の基本を押さえましょう。
Q:労働条件通知書とは?
雇用主が採用予定者(あらゆる雇用形態)に対して労働条件を提示するための書類です。労働基準法第15条で「使用者は採用にあたり労働者に対して事前に労働条件を通知する義務がある」と定められています。
Q:いつ渡せばよいの?
内定時に渡すのがベストです。法的には、入社日までが通知義務とされています。しかし、応募者は労働条件を確認してからでないと入社を決めることができないため、内定時が一般的になっています。
Q:何を記載すればよいの?
契約期間(更新)、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、休憩・休日、賃⾦(昇給)、退職に関することなど。必ず記載しなくてはならない労働条件が定められています。※詳しくは後述します
Q:紙の書類でなければいけないの?
2019年4月から、労働者が希望する場合にかぎり、FAXやメールでの交付ができるようになりました。※印刷して書面にできる形式のみ
労働条件通知書の記載内容
労働条件通知書には、労働時間や給料、休日など、生活設計にとって重要な条件を記載します。作成のポイントは、内容が明確に理解できるようにし、採用者が納得できるよう意識することです。適切に記載された労働条件通知書は、入社前に信頼関係を構築し、労使間のトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
●記載必須項目の記載例と注意点
以下は記載必須の項目です。記載例(一部)と書き方のポイントをおさえておきましょう。
| No. | 項目 | 記載例 | 注意点 |
| 1 | 労働契約期間 | ・期間の定めなし または ・期間の定めあり [ 年 月 日~ 年 月 日 ] (更新:自動的に更新する/更新する場合があり得る/契約の更新はしない) | ・期間の定めがあるときは更新の有無を記載 ※該当項目に〇をつける ・試用期間がある場合はその旨と期間を記載 |
| 2 | 期間の定めのある労働契約を 更新する場合の基準 | 契約の更新は次により判断する。 ・契約期間満了時の業務量 ・勤務成績、態度、能力 ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況 ・その他 [ ] | ・契約を更新する場合の 「判断の基準」を具体的に記載 ※該当項目に〇をつける |
| 3 | 就業の場所 | 特別養護老人ホーム〇〇(東京都港区芝公園2-11-1) ※人事異動により、就業場所を変更することがある | ・詳細な就業場所の住所を明示 ※人事異動等で就業場所が変わる可能性がある場合は記載しておくとよい |
| 4 | 従事する業務 | 1.介護業務 2.清掃業務 3.事務 4. ( ) | ・複数職種がある場合は列挙し、該当項目に〇をつける |
| 5 | 始業・就業時刻、休憩、休日 | 1.始業、終業の時刻 ※所定時間外労働 あり・なし (目安:10時間/月) 2.休憩時間:60分 ※夜勤のみ150分 3.休日:4週単位の勤務表による(4週8休) 年次有給休暇は6か月継続勤務後付与(10日) 夏期(3日)、年末年始(3日) | ・シフト制は全時間帯を記載 <例>(早番)7:30~16:30(日勤)9:00~18:00 (遅番)10:30~19:30 (夜勤)17:30~翌9:30 ・所定時間外労働(残業)の目安もあるとよい ・休日の種類と日数を記載 |
| 6 | 賃金の決定方法、支払時期、 昇給 | 1.賃金 基本給:月給 21万円 夜勤手当:5,000円/回 資格手当:7,000円/月(介護福祉士) 家族手当:8,000円/子ども12歳まで 賞与:あり(6月、12月基本給の3ヶ月分※業績による) ・ なし 2.賃金支払時期:月末締め翌月25日支払い ※本人名義の銀行口座へ振込 3.昇給:あり (4月更新、実績により判断) | ・賃金は最低賃金を下回らないように注意。手当ては名称と金額、支給条件を記載 ・通勤手当など変動するものは就業規則の規定によると補足するとよい ・残業代は割増賃金率を明示 ※みなし残業代の場合は時間と 金額を記載 |
| 7 | 退職について | 1.定年制 (あり:60歳 ・なし) 2.定年再雇用制度 (あり:70歳 ・なし) 3.自己都合退職の手続(退職する14日以上前に届出) 4.解雇の事由及び手続き (就業に適さないと認められたとき。または業務の縮小、事業の継続が困難なとき等) ※詳細は就業規則第〇条を参照 | ・定年制、定年再雇用制度がある場合は年齢もあるとよい ・解雇事由の詳細は就業規則を参照するよう記載してもOK |
ひな形を活用すると便利
厚生労働省からひな型が提供されています。雇用形態に合った形式を選び、自社の労働条件を入力しましょう。※表示されたページの下の方に「労働条件通知書」があります
迷いや不安を取りのぞく内定者フォロー
内定者の中には複数の内定が出ていて、どこに入社すべきか迷っているケースがあります。ここなら安心して働ける、信頼できる職場だと思ってもらうことが大切。また、直前の心変わりをふせぐためにも内定後も気を抜かず、継続的にフォローすることが重要です。

内定直後から信頼関係を築き始め、継続的にコミュニケーションをとることで、他社との迷いを防ぐことができます。また入社後も安心して仕事を始められるメリットがあります。
内定者に信頼される3つの具体策
内定は喜ばしいものですが、時間が経つと応募者が不安を感じる可能性があります。雇用主としては、適切な対応を心掛け、最悪の場合に入社直前で辞退されるリスクを最小限に抑えることが重要です。お互いが納得できる入社日を決定し、入社まで継続的にフォローアップすることが大切です。以下の3つのポイントを参考にしてください。
入社日の調整
よくある辞退のケース
▶入社時期を考慮してくれない:引継ぎに1ヶ月くらい必要だと面接で伝えたのにも関わらず、即入社するよう言われた
対策のポイント
柔軟に対応すると好印象
・内定者の就業状況や事情を考慮して入社日を提示する
・入社日は相談や調整の余地があることを伝えておく
(トーク・メール文面例)
入社日は7月上旬を予定しています。引継ぎや準備などが必要かと存じますので〇〇さんのご都合も伺い、決定しましょう。
継続的なコンタクト
よくある辞退のケース
▶連絡が来なくなってしまった:入社時期が数か月先でもよいと内定が出た。その後、書類送付や連絡もない
対策のポイント
入社まで間が空く場合は、2週に1回程度連絡
・引継ぎ、引越しなど内定者の状況を確認する
・施設の近況や内定者を歓迎している様子などを伝える
(トーク・メール文面例)
引継ぎは順調でしょうか。入社まであと1ヶ月ですね。こちらは、浴室の改装工事がおわり、利用者さまから好評いただいています。
入社後に必要な情報提供
よくある辞退のケース
▶入社後の働き方がわからない:研修があるのか、シフトはどうなるのかわからない。生活がどう変わるのか不安
対策のポイント
入社の不安を解消するとよい
・入社日までに必要な書類や手続きを詳しく案内する
・入社後の研修スケジュールなどをあらかじめ伝える
(トーク・メール文面例)
入社当日~3日間はオリエンテーションと研修を行います。実務は、4日目以降の予定です。※研修担当が一緒ですのでご安心ください
まとめ
内定者が万が一辞退する場合、これまでの採用活動はすべて無駄になってしまいます。採用担当者は内定を出した後も、確実に入社まで導く責任が求められます。特に労働条件通知書は法的に義務付けられている書類ですので、正確な内容を記載し、内定者に提示する必要があります。さらに、入社前の適切なフォローアップを行うことで、内定者との信頼関係を築くことができます。内定者が安心して働ける環境を感じることができるよう、彼らの気持ちに寄り添う努力をしましょう。


