はじめに
かつては、求職者の数が求人数よりも少ない買い手市場の状況下で、選考プロセスは長く、採用側が積極的に「選ぶ」傾向がありました。しかし、現在は求職者の数が求人数を上回る売り手市場となっています。また、求職者はブラック企業を避け、働きやすい職場環境を求める傾向にあります。現代における採用活動はどのようなものであるべきか、採用力をチェックし、以下の7つの新常識を確認しましょう。
常識?非常識!?採用力をチェックしてみよう
介護・障がい福祉職の業務は専門知識やスキルが必要な上、精神的、体力的にもタフさが求められます。決して誰でもできる仕事ではありません。採用担当者は業務に適した人材を見極める「採用力」を高めることが重要です。それではさっそく介護・障がい福祉人材採用の「常識と非常識のチェック」を行ってみましょう。
<応募編>
□ 常識 □ 非常識 | 採用ホームページにはたくさんの情報を載せると応募が集まりやすい |
□ 常識 □ 非常識 | 面接前に履歴書と職務経歴書を送付してもらうことは絶対に必要である |
<面接編>
□ 常識 □ 非常識 | 介護職の選考に限り、圧迫面接でストレス耐性を見抜いたほうがよい |
□ 常識 □ 非常識 | 選考中に質問があっても、職場の悪い面は見せないほうがよい |
□ 常識 □ 非常識 | 志望動機が「応募者の見極め」にもっとも重要なので必ず聞く |
□ 常識 □ 非常識 | 面接は2~3回実施し、慎重に応募者を選考する |
<内定編>
□ 常識 □ 非常識 | 入職してほしい人材には、内定後に手厚くフォローをすれば間に合う |
↓
↓
↓
↓
↓
実は…
7つの項目はすべて非常識です!
採用の常識をアップデート
採用の常識・非常識チェックの結果は「すべて非常識」。残念ながら採用活動においてはマイナスになってしまいます。求職者の職場選びの価値観は時代とともに変化しています。今までのあたりまえを見直し、採用活動の改善をすることで求職者から選ばれる職場になります。
「応募」これが常識!!
多くの応募を集めるためには、働く魅力をアピールすることと応募のハードルを下げることの2点が重要です。入口で幅を狭めず、求職者と出会うことを優先すると採用のチャンスが広がります。
新常識[1]採用ホームページには求職者が知りたい情報をメインに掲載!
求職者は限られた時間の中で求人情報を精査しています。応募や入職の判断に必要な情報を重点的に掲載することが応募を増やすコツです。
<求職者が知りたい3大情報>
- 仕事内容
- 待遇
- 職場の雰囲気
求職者が応募を検討している際に、必要な情報がすぐにわからないと不安を感じ、怪しいと感じて応募を躊躇することがあります。仕事内容、待遇、職場の雰囲気は特に重要な情報ですので、できるだけ詳しく、わかりやすく記載することが重要です。職場の雰囲気は文章だけでは伝えにくい場合もありますので、写真や画像を活用することもおすすめです。求職者が応募を決めるために必要な情報を提供することで、彼らの不安を解消し、積極的な応募を促すことができます。
新常識[2]書類選考を省いて応募のハードルを下げる!
かつて書類選考は応募者を厳選するために行われていました。売り手市場の現在は1件の応募が貴重です。また求職者にとって応募書類の準備は大きな負担になり敬遠されます。特に、在職中で忙しい求職者は「応募書類の提出が不要な求人に応募」する傾向があります。優秀な人材を逃さないためにも、書類選考は省くほうがメリットが大きくなるでしょう。
<書類がないと心配な場合>
- 未経験者や無資格者の場合のみ書類選考を行う。
- 面接の前にWeb面接や電話で最低限聞きたいことを確認する
「面接」これが常識!!
面接は、採用側が一方的に応募者を選考する場ではありません。応募者も自身に合った働く環境を見極める機会と考えています。悪い印象を抱かれると、選考辞退につながる可能性があるため、注意が必要です。特に面接官が威圧的な態度をとると、その職場がパワハラが横行しているのではないかと不安を抱かせてしまうことがあります。応募者との面接では誠実に向き合うことが重要です。
新常識[3]圧迫面接は絶対にダメ!
意地悪な質問や高圧的な態度で接する圧迫面接。たとえ厳しい環境であることを予め伝えたい思いだとしてもNGです。応募者の印象は悪く、お互いにとってプラスになることはありません。
<圧迫面接の事例>
- 頭ごなしに否定する
- 答えにくい質問を繰り返す
- 転職回数や前職に難癖をつける
圧迫面接を行うことは大きなリスクを伴います。応募者の選考辞退だけでなく、圧迫面接を行う法人だと周囲に悪評が広まる可能性もあります。面接官は法人の「顔」であることを意識するよう心がけましょう。
新常識[4]職場の現状は正直に伝える
面接は応募者がどのような職場環境なのかを確かめる機会でもあります。応募者から質問があった場合、回答内容がマイナス要素であったとしても取り繕うことなく現状を伝えましょう。間違った情報を伝えてしまうと、入社後「こんなはずじゃなかった」と早期離職を引き起こしてしまいます。
<こんな伝え方をしていませんか>
- 残業があるのに具体的な時間を伝えない
- 手当の支給条件や金額を正確に伝えない
新常識[5]人柄や考え方がわかる質問をする
志望動機は面接の鉄板質問ですが、模範解答を準備しやすく応募者の本心が見えてきません。尋ねる場合は応募者の回答について、どう考えたか、なぜそう思ったかなど掘り下げるとよいでしょう。本人の言葉でしか答えることができない聞き方をすることで性格を把握しやすくなります。
<志望動機のデメリット>
- インターネットなどに対策が載っており、模範回答を準備しやすい
- お手本のような回答は本音かどうか判断するのが難しい
新常識[6]面接はできるだけ1回で
応募者にとって複数回の面接は負担です。また選考期間が長くなると、競合他社に決まってしまうリスクも高まります。面接を原則1回にすることで、採用確率を上げることができます。
<面接回数を少なくする方法>
- 採用の決裁者に同席してもらう。優秀な人材はその場で内定を出す
- 不安な応募者の場合のみ、Webか電話で一次面接を行う
応募が採用につながらないと苦戦していた法人の中には、複数回の面接をやめて1回にしたところ、選考中の辞退が減り採用率が高まった事例もあります。また面接時間の確保や煩雑な日程調整も減らすことができ、採用業務の負担も軽減されるメリットもあります。
「内定」これが常識!!
応募者の多くは、通常一度に複数の企業の選考を受けています。優秀な人材ほど、複数の内定をもらっている可能性が高いです。内定を出したからといって、「応募者が迷っている」ということを常に心に留めておく必要があります。重要なポイントは、選考中から長期的なアプローチをすることです。内定辞退の防止は、一瞬で解決する問題ではありません。
新常識[7]採用したい人材とは選考中に信頼関係を築く
他の企業から内定をもらっている応募者が選考に参加するケースもあります。そのため、連絡時の対応や面接、施設見学などで他の企業との比較される可能性を想定しておく必要があります。内定後に応募者と接触することは難しいため、選考中から応募者と継続的に良好なコミュニケーションを取り、彼らが当社で働きたいと感じるようにすることが重要です。
<採用側の心理や行動>
- じっくり選考してから慎重に内定を出したい
- 入社してもらいたい人材は内定後に説得すれば間に合う
<内定にまつわるエピソード>
- 選考の連絡が遅いので先に内定が出たほうにお世話になることにした
- 面接に行く度、一緒に働きたいと言われて内定後は即返事をした
応募者心理に寄り添い、採用の差別化を
雇用する側だけが「選ぶ」習慣は、時代とともに大きく変化をしています。今までの採用の常識が非常識になっていることを意識し、応募者に寄り添った採用活動を行いましょう。最後に7つの新常識をおさらいしておきます。
<採用活動7つの新常識>
- 【1】仕事内容、待遇、職場の雰囲気を重点的に掲載(求人広告)
- 【2】履歴書や職務経歴書提出など書類選考は省く(応募/選考)
- 【3】圧迫面接は行わない(面接)
- 【4】悪い面も隠さず正直に伝える(面接)
- 【5】志望動機は聞き方を工夫する(面接)
- 【6】面接は原則1回で(面接)
- 【7】採用したい人材は選考中からフォロー(内定)
優秀で長く働いてくれる人材を採用したいという思いから、時間をかけて厳格かつ慎重な選考を重視し過ぎると、競合他社に人材を奪われてしまう可能性が高まります。この採用難の時代に生き残るためには、応募者の負担を減らし、迅速な選考プロセスに移行することが重要です。素早い採用業務への転換が、求められるポイントとなるでしょう。