介護・障がい福祉業務の現場は人手不足が深刻です。そのため一人当たりの業務量が多く、過剰な残業など負担が大きくなっています。介護・障がい福祉職に従事したい求職者が求める条件と働きやすい職場環境を知り、小さなことから改善していくことで人材確保につなげていきましょう。

職員が不満に感じている4つのポイント

職員が求めている職場環境をつくるためには、まずどのような不満や問題点から転職を考え、離職をしてしまうのかを把握することから始めましょう。

・上司や職場の人間関係が悪い

悪口や無視、仕事の押し付け合いなどが散見され、職場の雰囲気が悪くなっているにも関わらず、上司も見て見ぬふりをするので改善されないケースです。このような職場では職員同士のコミュニケーションがうまく取れないため業務に支障が出たり、精神的負担を感じ退職者が相次ぐ可能性があります。

・給与や待遇、働き方に不満

職員は長時間労働や身体的・精神的負担が大きいにもかかわらず、給与や待遇が見合ってないと感じている場合もあります。また、長い間在籍しても給与水準が変わらないとモチベーション低下につながってしまいます。

・職場の安全面や衛生面の配慮が不十分

介護や障害福祉の現場では感染症やケガなどのリスクがあります。特に新型コロナウイルス感染症の対応では心身的に大きな負担がかかりました。職場の安全面や衛生面への対応が不十分な場合、職員が安心して働くことができません。

・自己成長やキャリアアップの機会がない

日々、膨大な業務に追われ、ただ業務をこなすだけになってしまうと、自己成長やキャリアアップの機会がなく、将来に不安を感じることがあります。

以上の4つのポイントをどのように改善するのが良いのか、具体的に考えていきましょう。

人間関係がよく働きやすい職場とは

人間関係の悪化の原因はコミュニケーションエラーだといわれています。定期的に職員同士、職員と上司の意見交換会や情報共有の時間を設けることで、お互いが気持ちよく働ける雰囲気を作ることができます。良好な人間関係が築かれた職場は職員同士のつながりが深く、協力体制できるため、働きやすい職場になります。

介護職員が求める給与や待遇、働き方とは

厚生労働省が2022年に発表した「令和3年度介護従事者処遇等調査結果」によると、介護職員の平均月収は31.7万円であり、年収換算で約380万円でした。介護職員の平均年収は他産業と比較して低い水準であることが多く、介護福祉士や実務者研修の資格を持っていても、平均月収は約32万円前後であることが報告されています。少なくとも他産業と同等レベルの水準に近づけることが急務です。

安全で衛生的な職場とは

施設内で事故を防ぐための安全管理体制や適切な人員配置が行われていると安心です。また感染症対策に関するルールやマニュアルが整備され、手洗いやマスク着用、消毒などが適切に行われていることも重要です。施設内の換気、清掃や整理整頓など基本的な衛生管理は必須ですので、対応ができているかチェックしましょう。

キャリアアップや成長できる職場とは

介護・障がい福祉に関する業務は知識やスキルを通して、成長しつづける可能性が大いにあります。職員に対して定期的な研修を行い、スキルアップや専門的な知識の習得を支援できるとよいでしょう。また目標をもって働くことができるように明確なキャリアパスの提示、達成に向けて面談や指導を通じてフィードバックする仕組みが望ましいです。

それでは、具体的に「給料が改善できない場合の職場環境」「若い世代の職員が求める職場環境」「シニア世代の職員が求める職場環境」を実現するための取り組みを具体的に考えていきます。

給料が改善できない場合の職場環境改善とは

給料が見合わないと感じても、必ずしも全面的に不利になるわけではありません。給料の額と働き方や職場環境のバランスが取れていると感じることができれば、働きやすい職場となる可能性があります。具体的に見ていきましょう。

・ワークライフバランスの改善

まずシフト制度の見直しやフレックスタイム制度の導入、有給休暇の取得促進などでワークライフバランスを改善するとよいでしょう。働く環境を改善することで、従業員がストレスや負担を感じずに仕事ができるようになり、職場の魅力が高まるためです。その結果、企業は優秀な人材を引き付けることができる可能性があります。

・福利厚生の充実

給料を改善することができない場合でも、福利厚生を充実させることで環境を整えることができます。例えば食事補助、住宅手当・家賃補助、宿泊・レジャー施設などの割引などが考えられます。

・キャリアアップの支援

キャリアアップの支援を行うことで、職員のモチベーションを向上させることができます。資格取得支援や定期的なキャリアアップ研修など、従業員のスキルアップを促進する取り組みは好まれます。費用面で外部研修が難しい場合は、社内での勉強会や無料動画などを活用しましょう。

・職員の声を聴く

現場職員の声を取り入れ、継続して改善を行うことで働きやすい職場環境を作ることができます。職員同士の意見交換会を定期的に実施し、改善点やアイデアをともに考えるとよいでしょう。コミュニケーションが活発になることで、職場の雰囲気が良くなる効果も期待できます。また経営側と現場の風通しも良くなり、どちらかが一方的に不満を募らせることが改善されるでしょう。

このような方法を取り入れることで、給料が改善できない場合でも、働きやすい職場環境を提供することができ、応募者増や定着率アップなど人材確保が期待できます。

若い世代の介護職員が求める職場環境とは

若い世代の価値観を意識した職場環境にすることで、長く戦力として活躍してくれる人材を確保することができます。ここでもワークライフバランスの考慮、子育てなどの両立がポイントになるでしょう。

柔軟な勤務体制

介護・障がい福祉の職員は夜勤を含むシフト勤務もあるため、生活リズムが乱れやすくなっています。睡眠や体力の回復には個人差があります。できる限り希望休やシフトの組み方などは職員のライフスタイルに極力合わせることができるような体制を整えるとよいでしょう。フレックスタイムなども好まれます。

子育て支援制度

出産や子育てに直面している職員がいる可能性もあります。子育て支援制度があると、仕事と子育てを両立しやすくなり、職員の定着につながります。育児休暇や短時間勤務、保育所の利用支援などを整備しましょう。

資格取得支援

介護や障害福祉の業務に関わる資格は数多くあるため、資格を取得することでスキルアップやキャリアアップが可能です。そのため、資格取得支援を行うことで、モチベーションを向上させることができます。資格取得に伴う費用や時間的な支援は職員に好まれます。そして一人ひとりのスキルアップは組織全体の成長につながります。

シニア世代の介護職員が求める職場環境とは

介護・障がい福祉業界は深刻的な人材不足が続いています。改善策のひとつとしてアクティブシニアの活用が挙げられます。定年後もまだまだ元気、人生経験も豊富なため、戦力として活躍してくれるでしょう。一方、体力面においては若年世代に劣るため、健康面の配慮は必須です。また、プライベートの時間が確保できることも働きやすい職場環境のカギになります。

健康管理支援

定年後も現役として働くためには健康管理が重要な年代です。定期健康診断の実施に加え、健康相談の受け付けやフィットネスクラブの割引などの福利厚生があるとよいでしょう。

プライベートの時間を確保

仕事を続ける一方で、シニア世代は家族との時間や趣味の時間を確保したいと考える人もいます。時間単位の有給休暇やフレックス制度、時短勤務など、プライベートの時間が確保できる職場環境が望ましいでしょう

キャリアアップ支援

定年後といえども、仕事に就いているかぎりは成長できる環境を望んでいます。研修や資格取得支援などのスキルアップの機会を提供するとよいでしょう。また成果に応じて昇給や賞与の支給を行うことも重要です。

5つの実例でわかる!職員から好まれる職場

・職員の意見を取り入れた職場づくり

現場職員の声を元に業務改善を実施した結果、人間関係が良くなり、職場全体の雰囲気も明るくなりました。主な取り組みは施設長が現場の声を聞く仕組みを作りました。挙げられた課題についての改善点を双方で考えることにより職員のモチベーションが向上しました。

・コミュニケーションの機会創出

施設長が現場の声を聞く仕組みを作り、現場職員の意見を取り入れた改善点を実施。その結果、人間関係が良くなり、職場全体の雰囲気も明るくなりました。このような取り組みが実施された結果、職員からの評価が高く、職場の定着率が向上した事例があります。

・スキルアップやキャリアアップの支援

職員のキャリアプランの希望に応じて、研修や資格取得支援を実施。社内講師による勉強会や受験料の補助などが主な取り組みです。結果、職員一人ひとりが目標を持ち、自己成長ができる職場になりました。こうした取り組みが実施された結果、職員からの評価が高く、定着率が向上した事例があります。

・働き方の柔軟性

職員のライフスタイルに合わせた働き方を実現しました。パートタイムやフレックスタイム制度の導入や、夜勤回数の削減などを行い、職員の心身の負担を軽減しました。こうした取り組みにより、職員の満足度が向上し、定着率が改善した事例があります。

・テクノロジーの導入

見守りや身体介護などを担う介護ロボットの活用や、タブレット端末による報告書作成の手間を軽減できるようにしました。業務効率化による残業の減少や個々の業務負担が軽減され、職員の負担軽減に繋がりました。また、最新技術を取り入れることで、職員のスキルアップにもつながり、モチベーションの向上に繋がった事例があります。

上記のような実例を参考に、職員が働きやすく、定着しやすい職場づくりに取り組むことが大切です。定着率の向上には、経営者や管理職が職員の声に真摯に向き合い、改善に取り組むことが必要です。